編集長日記ー住宅と生活/ 下田
 名作住宅についての本は多い。しかし、その多くは建築としての名作住宅であって、そこに暮らすことにフォーカスした本はあまりなかったように思う。

 「アメリカの名作住宅に暮らす」(田中厚子・著 村角創一・写真 建築資料研究社 定価 本体¥2,400+税)は、アメリカで今も使われている名作住宅を訪ね、レポートした一冊だ。建ってから数十年経ち、持ち主や住み手が変わってしまっている住宅も多いが、どの家も美しく「継続」されている。

 そこに見い出せるのは、住み手の住宅の対する深い理解と愛着である。

 大きな家も小さな家もある。それぞれに管理やメインテナンスには大変な労力と費用がかることは予想に難くない。しかし、ここに登場する住み手は、みなそのことを歓びとして受け入れているように見える。

 住宅はどれも時間と風格が備わり、美しい。数十年前、建築家と建て主の思いが寄り添い、出来上がった建築は、今の住み手によって大切に継承されている。
 
 住宅と生活ーーそれが切り離せないものであることを、改めて感じる一冊だ。

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著者は、一軒一軒、調べ、手紙やメールで連絡を取り、訪ねていって話を聞いた。その時間と道程もこの本の中に、畳み込まれている。

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私が心を引かれた、ルイス・カーンの設計した最後の家「コーマン邸」。親子2代に愛された家は、アートのように輝いている。

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端正という言葉以外見つからない、整然と整った室内とそこから見渡せる芝生。

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こんな家に住んでみたい、と素直に思ったチャールズ・ムーア+ウィリアム・ターンブル設計の「スミス+ケノン邸」。

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ほぼ長方形の外観からは、想像できないほど変化に富んだ内部。リビングや風呂からは、直接それぞれのテラスに出ることができる。外と中をつないだ豊かな空間構成。
| by modernliving | 2009-11-30 23:17 | 下田