もう、15年以上前になるが,オランダの花市場に取材に行ったことがある。アムステルダムの運河沿いにある花市場では、花は「ひと束いくら」だった。日本ではまだ、1本ずつ花を売っていた時代。びっくりするくらい安い花束(10本以上の)をうらやましい思いで眺めた。
取材の合間に,私も市場で花束を買い,ホテルの部屋でグラスに活けた。ルームサービスで朝食を運んできたホテルのスタッフが、「きれいですね」と笑顔で言ってくれた。
虎ノ門から表参道に会社が引っ越して変わってことのひとつは、買いたくなるような花屋がそばにあること。そこではあのときのアムステルダムの花市場のように,「ひと束いくら」で花が売られている。花はとても身近なものになった。
代々木上原の花屋のチューリップの前を素通りすることはできず,白い八重咲きのチューリップをひと束買った。まだ蕾はかたく、とても安かった。
チューリップはやわらかく開き,少しずつ部屋に春を運んできた。