
会場に入ると、まずはこのチラシの絵からも想像できるような、日本画、琳派の伝統を再解釈した雪月花をモチーフとした大作が目に飛び込んできます。しかし、そこから一歩次の展示スペースに足を踏み入れると、まったく違う世界に驚かされます。初期の動物をモチーフとした一連の作品なのですが、日本画というよりはシュールレアリスティックな空気の漂う、色彩と構図。こんな絵を描いた人だったのか、と衝撃を受けました。花鳥図に妖艶な裸婦像、水墨画とその活動のエネルギーが画面から伝わってきて、芸術の力をびんびんと感じる時間となりました。
乾久美子さんが会場構成をされたのは、最後の工芸品などの展示部分。シンプルな木の箱の中に作品が収められていて、アクリルのふたを通して覗き込むような仕組みです。普通の展示では人の目の高さに合わせて作品が置かれることが多いですが、あえて箱の中に収めることで、それを覗き込んでいる鑑賞者の姿自体も展示室の中のひとつの風景になっているようでした。建築家って、建物や空間だけでなく、人の行為もデザインできるのだなぁと感心。
忙しさにかまけていると、なかなか美術館にも行かなくなってしまうのですが、少しの時間でも感じられること、刺激を受けることはたくさんあるのだと、あらためて実感できた一日でした。