2009年 10月 30日
編集長日記ーワクワク感がある「デザインタイド」!!/ 下田
六本木ミッドタウンで開催されているデザインタイド。去年の印象からも期待させるものがあったので、12時、真っ先にプレスプレビューへ。その予感は当たった。なんといっても、わくわく感がある。大きな企業は出展していないし、展示スペースは小さく、ひとつのブースに並んでいる物も少ないが、何かしら、へえ〜、と素敵な驚きがある。実際につくった人、デザインした人が、少しはにかみつつそばに佇んでいることが多い。興味を示すと、そっと説明してくれる感じも好ましい。
わくわく感をあおるのは、会場構成の力も大きい。設計はモダンリビングで対談「妄想建築」の連載をして頂いている、建築家の谷尻誠さん。連載の取材でお会いしていることもあって、タイドの会場構成のことも少し伺ってはいたが、実際に入ってみると想像以上だった。
ひと言で言えば「雲の中にいる感じ」。それも雲海・・・と言ったほうがよい。モクモクの雲に囲まれて、不思議に気分になってくる。照明が変わるたびに、雲の(実際は綿だけれど)表情が変化する。それが流れていく雲を連想させる。
素材はポリエステルとナイロン6.6の綿。2t以上という量は、ちょっと計りがたい。布団一枚が1.5kgだそうだから、何枚分の布団・・ということ!? 構造の部分は空気の入った梱包剤とか。そこにスプレーのりを吹き付け、手作業で綿を貼っていったそう。延べ200人くらいの人が作業したとのことで、ディレクターのみなさんも、会場のスタッフのみなさんも、みんな総出。その分、愛着もひとしおといった感じ・・・。
「そのまま貼り付けると、樹氷になっちゃうので、わざと手でもくもくさせたんです」とディレクターのひとり、Bachの幅さん。
おもしろかったのは、綿なので形を自由に変えられるため、それぞれのブースで見せたくないものは、綿の間に隠していたこと。少しくらい盛り上がっても不自然ではないのが、いいところ。水のペットボトルや作業用の工具など、みなさん結構巧み(!)に隠していらっしゃいました!
会場は、大きく3つに別れている。ゾーンAは新しいアイデア&プロダクトの展示スペース。ゾーンBは、販売も行っているマーケットスペース。その間に写真展をやっているゾーンCがある。

雲のトンネル!? 入り口から期待が膨らむ。

素材の綿の提供は、インビスタ社というファイバーメーカー。入り口近くには、カラフルな繊維もディスプレイされている。

この会場設計をした、建築家の谷尻誠さん。常に新しい斬新なアイデアと、それをやりきってしまう行動力に脱帽!

ブックディレクターのBach の幅さん。「僕の担当した綿の壁はこのあたりです(笑)」。

デザインタイドは昨年、ディレクター陣が一新。それが画期的な展開に、見事に反映されている。左から、幅さん(ディレクター)、谷尻さん、尾原文和さん(ディレクター)、松澤剛さん(ディレクター)、角田陽太さん。

角田さんが手にしているのは、木でできた汁次。縁が90度になっていると、汁切れがよく、尻漏りしないと実演してくれた。

家具デザイナーの藤森泰司さんのワークチェア。このチェックの張り地はスペシャルバージョン。

建築家・デザイナーの寺田尚樹さんは傘立てとテーブルやワインクーラーにもなるチェアを展示。

家具・インテリアを手がけるデザイナー、榎本文夫さんの竹を革のように貼った椅子。

水田祐史さんは、自身のリアルな細密画を布帛に転写。超現実がファンタジックなパターンに。

岩肌に植物が生育するイメージを花器にしたRook vaseは、倉本仁さんのデザイン。中に水も入リ、組み合わせて使える。

私が座っているのは、セブンチェアにロッキングする脚をつけたもの。この脚=Rook 7は机宏典さんのデザイン。海外では商品化されおり、購入可能とか。

本をバックのように肩に掛けて持ち歩けるプックカバー。紐を挟んでおいて、ページをすぐに開けるので、特にガイドブックに重宝する。

印伝(鹿革に漆で模様をつけている)を用いたiphneケースは、薄くて滑らず手になじむ。丸若屋のデザイン。
マーケットスペースの一角には、「ソウル・ヤング・デザイナーズ・パビリオン」も。生活を便利にしたり、微笑ましくする小さなオリジナルアイテムは、どれもとても興味深かった。

スイッチを押すと、USBが出現。PCとつないでおけば、一度に複数のUSBを使える。

パチン!と押すことで、プラグを簡単に外せるコンセントのハブ。横に連結することも可能。

充電式のLEDライト。SOAPという名前の通り、充電器にのせたところは石けんそっくり。充電してあれば、外して10時間点灯できるそう。

テッシュが一枚ずつ出てくるティッシュバッグ。普通のペーパーバッグにティッシュが出て来るようリードするホールをつけただけだが、木のプリントがティッシュと一体化。愛嬌のあるデザイン。

有田焼の古伊万里の柄に、敢えて現代のプリントを加えたそば猪口。古典が斬新に変身。

ニット作家・永濱幸子さんのニットのインテリア。大小の素材の花のモチーフをつなげて、ラグや椅子の貼り地にしている。すべてハンドメイドなので、ラグは3カ月かかったとか。ふわっとした立体感と柔らかなフォルムが心地よさを誘う。

アップにするとこんな感じ。微妙な色の違い、素材の違いで奥行きを出している。

いわば、起き上がりこぼし鉛筆。半面ずつ、比重の違う木を軸に使っているので、転がっていかない。
自分で発見するのが、こうしたデザイン展示の楽しみ。デザインタイドの雲の間を巡りながら自分だけの「宝探し」をしてみてください。