はじめて聴くフォルテピアノの音は、まるで中世にでも舞い込んだような感覚になりました。
背後では吉村順三さんの作品らしい障子越しに、少しずつ光が変化していくのがわかる。
日本人特有の光との過ごし方を、とても大切に考えたモダン建築の障子です。

園田邸は1955年にできた住宅。1955年といえば、もちろんシミリエは影も形もない。
戦後のまだテレビもろくに普及していない頃。
とんでもなくハイカラだったにちがいない。
外壁は杉と漆喰。当時延床面積が77㎡。
実はこの作品で吉村建築を見るのは2つめ。

リビングは包まれた感じが居心地いい。写真手前に当時は2台のグランドピアノが
置いてあったという。彼の結婚が決まったときに敷地内にご両親が建ててくださったというピアノ室メインの家。

2階の寝室から出た踊り場のようなところからは吹き抜け越しに下のフロアが見える。
こじんまりとしていい大きさ。その20年後くらいに増築なさったそうですが、
増築部分は吉村事務所の中この家を担当した小川洋さんが増築部分の設計をしたそうだ。
写真で人がいるところは最初は壁だったが、増築でぶち抜いた。

いろいろなところに明かりとりの障子が。光の入れ方が絶妙。

やさしく室内に入る自然光。独特です。

これが増築部分。ここでコンサートが開かれた。2階は寝室。

正面が昔の玄関で、そこからピアノ室と暖炉のあるリビングに入る。

大きな楠。2階にはこの木だけが見える窓もある。
1955年とくらべてとても大きくなっているはず。

心地よい小さな庭。

コンサートの後は、建築史家の鈴木博之さんと後藤治さんによるお話もあり
すばらしい音楽と居心地のいい建築の中で
至福のときを過ごしたのでした。
つづく。