2010年 04月 16日
編集長のミラノサローネ日記3ーグリーンを使った「知恵と工夫」
今回のサローネでは、デザイナーに頼っての展開が極端に減った。不況の影響を最も感じさせる部分だ。もちろん,カルテルやモローゾの吉岡徳仁さん、13ブランドとのコラボレーションをした深澤直人さん,B&Bイタリアやモローゾでの存在感が際立つ,パトリシア・ウルキオラなどもいる。だか。数年前のように、キラ星の如く,著名デザイナーの新作をいくつも並べるということはどのブランドもできない。
それにも関わらず,以前同様の展示をしているブランドはまだ多い。当然,すかすかした感じは否めない。こういう時代だからこそ,数少ない新作,商品をより魅力的に見せることが必要だ。
展示で目を引いたのは、なんといってもグリーンの存在。全体的に活気がなかった家具では、あまり目立たなかったが,クチーナ(キッチン)の展示では、グリーンの存在がキッチンを引き立てる役割をしている。ユーロモビルのグリーン使いは、小さな鉢植えをたくさん使い,リビング&クッキングというテーマの中で,エコと環境という「今」を表現していた。
昨日のトルトーナ地区の展示でも,グリーン使いは圧倒的だった。グリーン自体,ハーブや野菜などを多様しているのも特徴。特別な樹種ではなく,日常にあるグリーンだ。
「オルランディ」は最近特に注目されている場所。グリーンで囲まれた中庭、古い建物のリノベーションが気持ちよく,そしてカッコいい。
ここではピート・ヘインイーク,深澤さんの作品展,アイデックなどのほか,個人のアーティストの展示もおもしろかった。そして中庭には,野菜を使った展示がたくさん登場していた。
お金をかけて作り込むことができない以上,家具にしろキッチンにしろ,見た人たちがモノに魅力を感じられるようにするには,知恵と工夫をこらすしかない。 グリーン自体は、ビジネスとして成り立つものではないが、人の気持ちを引きつけ,モノを引き立てる、今最も魅力的なアイテムということができる。
以下、スタッフ、モモのフォトログでサローネ3日目の模様を。

サローネではユーロクチーナというキッチンの展示と、ユーロルーチェという照明の展示が隔年で行われていますが、今年はクチーナの年。
メイン会場、フィエラの西寄りのパビリオンにはキッチンブランドのブースがずらり。
まずはユーロモービルへ。
写真の「アッシム」は従来よりユニットの高さを抑えているため、ダイニングテーブルがハイカウンターにならずに、通常のダイニングのように使えるもの。キッチンだけではなく、LDKをひとつの空間として手がけているのが特徴。

続いてFTKという設備系の展示が集まったホールでアリアフィーナのレンジフードを撮影。でこぼこのあるカートリッジを使っているため、フィルターがないタイプ。

ドイツのキッチンブランド、ポーゲンポールは新作に建築家のハディ・テラーニを起用。天井と床までユニット化し、より建築的に空間をつくりだす「アルテジオ」は多くの人の注目を集めていました。
今日は昨日に比べて来場者が多く、どこも混雑。撮影するにも、人を避けて撮るのは難しいのですが、時には間隙を突いて一瞬人のいなくなった瞬間に撮影したり、時には人が自然に入った構図で撮ったり。とにかく手際よくブースを回っていきます。

ヘッカーの新作は黒いフレームがシック。角がまるいのでどこか可愛らしさも感じられます。

アルマーニダダのキッチンは、面材の色や質感にアルマーニらしさが。

フィエラの一番奥側に集まったキッチンのブースから引き返し、歩くこと1キロほど?昨日に続き家具のホールに。
昨日もご紹介したリーン・ロゼ、今日はカメラマンを入れての撮影です。写真右でカメラを覗き込んでいるのが撮影をお願いしているミケーレ。ラテン系というよりはシャイなイタリアーノで、とても優しい。


ザノッタの新作のソファはシートが3層に重なっていて、編集長がミルフィーユソファと命名。

昨日ショップでの展示は、並んだ割に少し拍子抜けだったモローゾも、フィエラでの展示はがっつりと。発泡スチロールを使ったパーティションがくねくねと会場に張り巡らされ、そのくぼみにウルキオラや吉岡徳仁さんの新作が。

トーネットでは、昨年発表された深澤直人さんのエクステンションテーブルに加え、チェアが登場。天井から逆さまに吊るした展示がユニークでした。張り地の色も鮮やかなオレンジなどがあり、テーブルの凛とした潔い姿に、少しやわらかさが加わった印象。

ビトッシではユーモラスな形の照明を発見。帽子をかぶった人が首を傾げているみたい?です。

ミッソーニでシェーズロングを試してみる編集長と私。会場をぐるぐる回っていると疲れてくるのでソファや寝椅子に試しに座ってみると、ぐぐっと重力がかかってなかなか立ち上がれなくなってしまいます。ちなみに手前に写っている赤いバッグはプレス関係者に配られるもので、各会場で配られるプレスキットや資料を入れてころころと転がして歩けるので便利。

マルニ木工の新作は深澤さんのHIROSHIMAシリーズの小ぶりなチェア。ここを含め、我らが深澤さんの作品の展示は10カ所以上に及びますが、ほぼ制覇できたはず。

3時にはフィエラ会場を後にし、ミラノ市内へ。一昨日も覗いたオルランディを再び訪れました。一昨日はまだ準備中で、果たして間に合うの??と思っていましたが、きっちり完成しておりました。緑いっぱいの中庭がある空間なので、このくらいの時間にいくととても気持ちいい。

その中庭を囲むようなコの字型の建物に、さまざまなブランド、デザイナーの展示が。ピート・ヘイン・イークの廃材を使ったシリーズに鉢カバー(?)が。他にもデルフト焼のようなブルーの絵付けの陶器などもあり、やっぱりピートいいなぁ、と思って見ていたら、、、

ご本人が!いらっしゃいました。新作の照明はアンティークのランプシェードを使ったもの。大きいものでは62個も使っているそうです。

オルランディでは2階にショップも。ガエターノ・ペシェのベースと合わせてディスプレイされていたパオラ・ナヴォーネのエスプレッソカップが可愛い!

続いて、デュポンコーリアンのショップへ。カリム・ラシッドがデザインした展示では、何とベッドまでコーリアンでつくられていました。

深澤直人さんが手がけた木綿豆腐のような質感の「リネン」というタイル(モダンリビング188号でも紹介しています。)のメーカー、BRIXの展示はアーチが連なる建物で。

サローネでは案内をいただいている展示ばかりでなく、ガイドブックを見ておもしろそうかも、と思ったものにも極力足を運んでいます。コウちゃん先輩の嗅覚を頼りに訪れたのは、projectBというアート系の展示。7人のアーティストがチェス盤と駒をつくるというもの。草間弥生さんの作品は一目見て草間さんとわかる水玉模様とカボチャのような形。参加できなくなった某アーティストの代わりに急遽作品をつくったそうで、このインパクトはさすがです。

こちらはアラステール・マッキーの作品。虫を樹脂で固めたものが駒に。地上の虫VS飛べる虫になっているとのこと。
家具やプロダクトだけでなく、コンテンポラリーアーティストの作品を身近に見られるのもサローネの魅力。

アレッシィのショップで見つけたのは、マルティノ・ギセの遊び心溢れる時計。文字盤がホワイトボードになっているので、数字や言葉を自分の好きなように書けるというもの。

そこから少し歩いてフォルナセッティのショップへ。ちょっとドキッとするような独特の世界観ですが、選び方、合わせ方でインテリアにかなりいい味が効くはず。何よりひとつひとつのアイテムが魅力的。

さらに少し歩いてヴェニーニの展示へ。小さな邸宅をコンバージョンした美術館が会場で、色ガラスの窓や石の階段など空間が素晴らしい。そこにスタジオ・ジョブのシャンデリアが。

こちらのシャンデリアはビザッチャというモザイクタイルメーカーのもの。クリスタルの煌めきがほんとうにきれい。

19時過ぎ、一雨通り過ぎた後、まだ少し明るい頃にnendoの展示へ。その名も「chair garden」。中庭にも建物の中にも、小さな鉢とその上に小さな模型の椅子がのったものがたくさん、たくさん置いてあります。1000個ほど!あるそうで、真っ白の鉢+椅子が石畳の上、草の上に並んでいる様子は不思議なスケール感で、思わずみんなしゃがみ込んでマクロモードの撮影に。

日が暮れて駆け足でラストスパート。フラミニアはアレッサンドロ・メンディー二の新コレクション。

ミッソーニホームはフィエラでも見ましたが、ショールームではジノリとのコラボレーション。ミッソーニらしいカラーのストリングがさがり、その下に同系色のテーブルウエアが。これが何パターンも展示されていて、色によってさまざまな印象が。
ここで今日の取材も終わり。プレオープンを1日とフィエラ+ミラノ市内の弾丸ツアーを2日。駆け抜けた感もありますが、かなりの数を見ることができ、そして初サローネの私も数を見ることで全体として、自分の中にサローネ2010像のようなものが少しできてきたような。
と、少し慣れたところで残すは1日に!
だいぶ足が痛くなってきていますが、明日も現場でなるべく多く吸収できますように。
最後に街角の露天の花屋さんで見かけたお花の写真を。