
波打つ外観の国立新美術館は、ガラス越しの緑がきれいだ。
6 月25日(火)、校了まっただ中の合間をぬって、国立新美術館で開催されている「ポスト印象派展」のプレビューに行った。
プレビューの利点はいくつかあって、混雑せずに鑑賞できる、写真撮影可能、
図録をもらえる・・・しかし、何よりもいち早く観ることができる、というのがうれしい。
今回の「ポスト印象派展」には注目していた。
2年前、パリ取材の時、なんとか時間をひねり出してオルセー美術館に行った。
鉄道の駅舎をリノベーションしたオルセーは独特の空間だ。
そのとき、多くの名作の中で、最もインパクトのあったもののひとつが、
スーラの「サーカス」だった。
実際に見ると、澄んだ色に驚く。
色を混ぜないため、とてもクリアなのだ。
今回はその「サーカス」習作も出展されている。
スーラの用いた点描という技法は、カラー印刷の原理そのものだ。
MLを含め、一般の印刷物は、ブラック、マゼンダ、イエロー、シアンの
黒、赤、黄、青の4色ですべての色を表現する。
スーラの絵は、もちろんもっと複雑だが、距離によって見え方が変わる
点描の魅力は、展覧会でなければわからない。
以下、私の独断で印象に残った絵をピックアップ!

スーラの「ポール・アン・ベッサンの外港、満潮」。
この繊細さ!
画面の周囲と額縁にも、スーラ自身による点描が施されている。
画面をより明るく見せ、観客の視線を集中させる効果があるそう。


どういう色の配置にしていったか、その過程がよくわかる。

この黄色いベッドとブルーの壁の対比に惹かれる。

モーリス・ドニの「木の中の行列」。
今回の展示では、テーマごとに壁の色が変えられ、それがとても効果的。
特にこの絵と壁の色とのマッチは美しい。
マットな色調、抽象化された構図は、モダンな空間にも合いそうだ。

「ポスト印象派」とは直接関係はないが、突然、表れたハンマースホイの「休息」。
以前の展覧会で見そびれていたが、やっと本物に対面し感激。
静謐な空気は独特の世界観。

ヴァイヤールの「公園」の9枚の連作のうちの5枚。
1908年まで、ある邸宅の食堂を兼ねたサロンの装飾画として飾られていた。
1枚ずつ完成された絵でありながら、ひとつのつながった景色に見えるのがおもしろい。
PS オマケ。

ピエール・ボナールの「白い猫」。
何となく、ほっこりする1枚。
観ないと後悔する展覧会のひとつ、といえそうです。
<国立新美術館ホームページより>
このたびオルセー美術館の珠玉のコレクションの中から、絵画の傑作115点を一堂に展覧する「オルセー美術館展2010―ポスト印象派」を開催いたします。
19世紀末のフランス。印象派がもたらした絵画の刷新を受け、その豊かな才能を開花させた一連の画家たちがいました。セザンヌ、ゴッホ、ゴーギャン、スーラは、1880年代後半から90年代にかけて、それぞれの表現を追及し独創的な成果を上げました。いわゆる「ポスト印象派」の登場です。
本展覧会は、このポスト印象派の時代に着目した展覧会です。これまでポスト印象派は、印象派へのアンチ・テーゼであり、20世紀の前衛絵画の登場を促す動向と見なされてきました。しかしこの時代の絵画は、一言で括るには、あまりに多様で豊饒です。世紀末パリという文化的宝庫から流れ出たいくつもの豊かな水脈は、互いに交差し、時代全体を動かしていたと言えるでしょう。
会期
2010年5月26日(水)~8月16日(月)
毎週火曜日休館
開館時間
10:00から18:00まで ※金曜日は20:00まで。入場は閉館の30分前まで。
会場
国立新美術館 企画展示室2E(東京・六本木)
〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2