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福島県いわき市の避難所から/サトウ
  福島県いわき市にある避難所にきています。
ここは、先の震災により事故が続いている東京電力福島第一原子力発電所の影響で、避難を余儀なくされた
楢葉町の町民の避難場所になっています。

私も、この楢葉町の出身です。

現在は、避難所となっている中央台南小学校でボランティアとして活動をしています。
今日で4日目ですが、昨日大きな余震があり、現在いわき市の広域で断水をしているような状況です。

避難所には約150名ほどの方たちが生活をしています。
行き先が決まり、避難所を後にする方がいる一方、遠方の避難地から、この避難所に戻ってくる方もいます。
一昨日、3ヶ月の期限付き避難所として提供された海沿いのホテルに移動された方が数多くいました。
しかしなかがら、昨日の地震により、津波の被害を恐れて避難所に戻られる方も多く、避難所完全撤収のめどはまったくたっていない状況です。
ホテルの場所の周辺が、壊滅的な津波の被害を受けているのもそのひとつの要因になっています。

今現状では、避難者の方々の住宅の確保と、それに伴う避難所の撤収が課題となっています。

実際に現地では、1.今すぐそこにある課題、2.そしてこの先の課題、くわえて、3.地域特有の問題があると考えられます。

1.今すぐそこにある課題
洗濯がしたい
これは避難所の方々がよく言われることです。今日からまた断水が始まってしまったので、
早急に対応してほしい課題だと言えます。

2.そしてこの先の課題
住居・職業の安定
いわき市は、市内も津波により甚大な被害を受けています。そのため、原発周辺住民の避難者には住宅の供給が遅れています。むろん、市民にも未だ仮設住宅の提供などは始まっていません。既存の建物(市の雇用促進住宅など)での対応は始まっていますが、それも十分ではなく、アパートなどに正規家賃を支払い居住場所を確保する方の方が断然多い印象です。

3.地域特有の課題

これが最大の課題であると思っています。
まず原発周辺住民の避難者の多くの住宅が現存していることがひとつ、大きな違いです。
私もこの町の出身者ですが、住民の多くはとても素朴で、保守的な思想をもっていると感じます。避難が長期化するにつれ、また原発事故の収束に数ヶ月〜数年の時間が要されることが明らかになりつつある今、「自宅に戻ることは困難」と判断される方が一般的、もしくは多数派と考えていましたが、少なくともこの避難所ではそうではありません。
「来月くらいには…」という声もあります。ですから、住宅を借りたりはせず、また遠方への避難は行わず、いわきに留まって、避難が解除されたらすぐに戻れるように準備したい、という気持ちからこの避難所に留まる方が大半をしめています。

東京をはじめ、京都や沖縄など、さまざまな自治体が住居の無償貸与を申し出てくださっていますが、受容と供給の間に、大きなミスマッチがあります。
自宅周辺に少しでも近くに残りたい住民と、周辺地域は被災地のため住宅供給がままならない。
それにより避難所生活の長期化が進んでいるとも言えます。

また、町民の多くが原発関係者であることも、いわきから、ひいては避難所から離れられない要因でもあります。
避難所から福島第一原発に出勤している方も数多くいらっしゃいます。原発依存の町で、このような状況になっても原発から離れて暮らすことができない現状があります。
また町民の意見としても、「第一原発再開」を望む声は少なくありません。
その点に関しては、私自身も非常に落胆しています。
私の母も原発関連企業に勤務しており、震災当時は福島第2原発内におりました。私の家族の暮らしも、東京電力によってまかなわれてきたのです。

しかし今回の件は、その代償としてはあまりにも大きすぎると思っています。
地域社会は崩壊しようとしています。酪農家や農家は廃業を余儀なくされるでしょう。
産業のない町の基盤となってきた企業であることは間違いないのですが、いま、現在の困難を、一体何が引き起こしたのか、再度皆で考える必要があるのではないでしょうか。
ある方はこう語りました。
「原発はきらいじゃない…」
その言葉はとても重い。きらいじゃない、けど…。
家族や親類、友人たちが原発の現場で働く今、思ったことを言うのはとても難しいことです。
私もまた、原発の町に生まれ、その恩恵を享受し、この被害にあった人間として、
これからの町のあり方を考えなければなりません。

福島県いわき市の避難所から/サトウ_c0195791_16323492.jpg


写真は避難先のひとつになっているホテル周辺。がれきが残り、津波の被害の甚大さが見てとれます。
| by modernliving | 2011-04-12 15:24 | サトウ