いいわっぱのお弁当箱が欲しいな、と思っていました。
先日、「猫のしっぽ、カエルの手」という番組で紹介していた
秋田の柴田慶信商店の曲げわっぱが気になって、
検索してみたら、日本橋三越で扱っていました。
ネットで直接買う事もできるのですが、
大きさを確かめたかったので、実際に行ってみました。
ちょうどイベント会期中で、作り手の柴田慶信さんがいらっしゃり、
お話をお聞きすることができました。
柴田さんの曲げわっぱはウレタン塗装をほどこしていません。
扱いが難しいのでは、傷がつくのでは、と思いがちですが、
実はとても丈夫なのだとか。
秋田杉は筋が硬く、筋と筋の間が柔らかいので、適度に蒸気を逃がして
ご飯をおいしく保ってくれるとのこと。
タワシとクレンザーで洗う(中性洗剤は使わない)ということも
教えていただきました。
なぜ、曲げわっぱは白木でなければいけないのか、ということを
柴田さん自身が、HPに書いていらっしゃいます。
<柴田慶信商店のHPより>
(昭和60年代以降は)秋田杉が本来持っている吸湿性、芳香、殺菌効果によってご飯の味を生かすということよりは、汚れず扱いやすくスポンジと中性洗剤で洗えるような曲げわっぱになっていきました。
私自身もそのようなことに迷いを感じなかった頃、こどもの運動会に持参した、周りが羨むほど華やかな自慢の曲げわっぱに詰めたお弁当をいざ口に入れたらウレタン塗装の臭いで食べられませんでした。
自分で作っておきながらこの日この時までその臭いに気付かなかったのです。
そこで改めて本来の白木の大切さを痛感し、ご飯を入れる器は「白木」でなければならないと肝に銘じました。
白木の曲げわっぱはご飯の水分を程よく吸収し、冷めても美味しく、天然秋田杉の香りが食欲をそそり杉の殺菌効果でご飯が傷みにくくご飯を詰めてから常温で一昼夜も痛まず持つほどです。
柴田さんのお弁当箱の止めの部分には、桜の皮が使われています。
実際にやってみせてくださったのですが、薄い切れ込みを入れて
桜の皮を通したあと、霧吹きをかけてアイロンで加熱。
これだけで、木がしまり、しっかりと止まるのだそうです。
自然の素材はすごい、と思うとともに、
それを見つけた先人の知恵に驚かされます。
柴田さんは180年前のおひつも見せてくださいました。
そこに使われている「鱗止め」という手法が
柴田さんのつくるおひつにも使われています。
それは、デザインとしてもとても美しいのです。

これが私の買った長手弁当箱(小)。
すっと細長い形が使いやすそうです。
自由に動かせる仕切り板が2枚入っています。
どんなお弁当を作ろうかな、と楽しみになってきます。

柴田さん(左)と私。
ここにあるものは、すべてひとつひとつ、
柴田さんと息子さんの昌正さんが作った曲げわっぱです。
確かな手仕事から生まれた美しいものは、
丁寧に暮らすことを促してくれる力があると思います。